2010年8月27日(金曜日)
【読後感】優しかった彼女をなぜ鬼嫁に感じるか~脳科学で正す「不合理」な思考
子どものころ、般若のお面は女の顔だと聞いてショックを受けた。知る前より何倍も怖くなった。と同時に、怖いもの見たさというのか、女の人の本性が鬼なら、その実体を見てみたいと思うようになった。念願かなって(?)大人になってから何体かの鬼に出会ったような気がする。
「彼女をなぜ鬼(嫁)に感じるか」というタイトルを見て予想した本書の内容は、男がそう感じるのにはなにか科学的な理由があり、実はただの錯覚で、鬼など幻想にすぎない。そうわからせてくれる論理の展開だった。それはそれでぜひ読みたい。
読み始めると、まず「ヒューリスティック」なる言葉にぶつかる。認知心理学の専門用語で、ひと言でいえば人間の「思い込み」のこと。たとえば「キャビンアテンダント」と聞くと「みんな美人」と思ったり、一度だけ微笑んでくれたことを根拠に、「彼女は100%優しい人」と思ったりする、脳が下す不合理な判断の呼び名だ。
「恋(中略)はすべてヒューリスティックがもたらした幻想だといえなくもありません」と、東大卒・医学博士の著者は言う。「でも幻想のあとには現実が待ちかまえている」。だから、「優しいと感じていた彼女が鬼嫁に変身することもある」と。
なるほど。幻想は「鬼」ではなく「優しい彼女」のほうだったというわけだ。だが、そんな月並みな結論なら、偉い先生に教えてもらうまでもなく、人生が教えてくれる。
「これを読めば、女性を鬼だと感じるのは錯覚とわかるかも」。その思い込みがまさにヒューリスティックだったようだ。
『優しかった彼女をなぜ鬼嫁に感じるか
――脳科学で正す「不合理」な思考』
著書...吉田たかよし
発行...角川書店
価格...760円
文●アスキー・ドットPC10月号掲載

